2日目(松坂優希) ― 2014/09/25 08:41
皆様、こんにちは。
松坂優希です。
10月5日に行われる「宮沢賢治の聴いたクラシック」。
今回私は、ナビゲーターの萩谷由喜子さんからのリクエストで、ベートーヴェンの月光ソナタより第1楽章、シューマンの子供の情景よりトロイメライ、そしてリストのパガニーニによる大練習曲よりラ・カンパネラを演奏させていただきます。
私は、2002年から2006年まで、オランダのロッテルダム音楽院に留学していたのですが、リストのエチュードというと、師事していた恩師、アキレス・デッレヴィーネ先生から聞いた逸話をいつも思い出します。
アキレス先生は南米のご出身で、かの有名なピアニスト、クラウディオ・アラウの元でピアノを学ばれた方です。
アラウはベートーヴェンなどのドイツ音楽を得意とするイメージの強い演奏家ですが、自身がリストの高弟であるクラウゼに師事していたこともあり、リストの演奏においてもまた、一筋縄ではいかぬこだわりを持ったスペシャリストでした。
さてさて、時は遡り1960年代。
初めてアラウの家の門を叩いた若き10代のアキレス先生は、レッスン室に通され、まずリストの超絶技巧練習曲を弾くよう言われたそうです。
緊張しつつも1曲を無事に弾き終え、アラウの顔を伺うも、無言。
違うエチュードをもう1曲弾くも、まだアラウは黙ったまま。
仕方なくそのまま数曲弾いていると、おもむろにアラウが立ち上がりピアノの前に腰掛けると、エチュード全曲をさーっと一息に、あたかも息をしているかのように自然に、それでいて信じがたいほどに素晴らしい指さばきと音色でもって弾き切ったんだそうです。
「つまりね」にっこり笑うアキレス先生。
「彼にとっては、12曲全て通したものが、ひとつの作品としての”超絶技巧練習曲”だったんだよ」
はぁーっと感嘆の息を漏らした私に次の瞬間、予期せぬ一言が。
「じゃあ、ユキの次の宿題はエチュードにしようかな。まずはショパンね」
「ええと……どれをやったらいいでしょうか?」
嫌な予感が胸をよぎる私に、にやりと楽しそうな先生。
「どちらでもいいよ。op.10でもop.25でも、好きな方全曲で!」
(ショパンのエチュードは、op.10とop.25に、それぞれ12曲ずつおさめられていて、通常は1~2曲ずつ抜粋して順に勉強します)
留学一年目の秋。忘れられない思い出です。

アキレス先生と一緒に
松坂優希
尊敬する指揮者・山田さん(仙台フィルスペシャルカルテット・小川有紀子) ― 2014/09/25 09:26
仙台フィルの公演は全部で五回。そのすべてを山田和樹さんが振ります。今日は彼の話をしましょう。
尊敬する指揮者…簡単に言えば、その方が新しくオーケストラを作るぞ~なんて話になったら、しっぽ振ってついていきます的な気持ちにさせてくれる方。ワタシには三人ほどいらっしゃいます。
山田さんは歳はかなり下ですが、日本のみならず世界でも評価されています。その理由は、音や音楽の創造力が凄いからではないでしょうか。
仙台フィルにも持ち音がありますが、彼が振ると音色や流れが変わっていきます。そして、出来上がってきたものにプレーヤーも賛同共感でき、お客さまにもそれが伝わっていくというしくみ。
才能を感じてワクワクo(^-^)oもしますし、負けていられない、要求されるものをいつでも応えられるようにしなくては!と思わせてくださるのです。
今回はたくさんの素敵なソリストと共演も多く、絶妙な相方ぶりを披露してくれるでしょうね。
貴重な一枚…とある学校に復興コンサートとして一緒に音楽の授業をさせていただいた時の、事前打ち合わせのショットです。ピアノ弾いてくださいました。

仙台フィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン奏者 小川有紀子
スペシャルプログラム (山田和樹) ― 2014/09/25 11:15

今回の「せんくら」二日目の10月4日は、三善晃先生が逝去されてからちょうど一年になります。
思えば昨年9月に仙台フィルと、三善先生作曲のヴァイオリン協奏曲を演奏(ソロは神谷未穂さん)したのですが、その直後にお亡くなりになってしまったのです。
僕が初めて三善先生の音楽に接したのは、高校の入学式で。校歌演奏で流れてきた前奏に、頭を殴られたような衝撃を受けたのを今も鮮やかに覚えています。それは完全に「校歌」という概念を越えた芸術性溢れるもので、それこそ三善先生が作曲されたものでした。
三善先生とお会いできたのは数回だけでしたが、毎回お釈迦様のような笑顔を浮かべられ、後光が射しているかのようなオーラを前に、僕は全く言葉を発せなくなってしまったものです。
三善先生の一周忌の日に、改めて追悼の想いを胸に、先生の合唱作品を演奏するスペシャルプログラムを組ませていただくことができました。
http://sencla.com/schedule/detail.php?id=58
この公演では大人だけでなく中学生にも演奏してもらうのですが、最後の「夕焼小焼」ではその全員で合唱をします。
戦争という明日生きられるかどうか分からない極限の時節を送られた先生にとって、真っ赤に沈む夕焼けは、生と死とに直結するものだったと思います。実際に三善先生は、夕焼けを目にすると一歩も動けなくなってしまう、ということがあったそうです。その先生の編曲された「夕焼小焼」は、時代を越え空間を越え、生と死をも越えて、宇宙的な広がりさえ感じさせる作品になっています。
大震災を乗り越えていこうとしている今、未来を担う若者達とこの曲で共演できることを特別に思っています。
山田和樹
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